設備資金で出すか、運転資金で出すか?

融資を申込む際、必ず設備資金か運転資金かを聞かれます。

設備資金というと、店舗の内装工事資金や機械の導入資金、営業車両の購入資金など、主に固定資産を購入する多額の資金を想像されると思います。

では、自社開発のソフトウェア開発費に500万円かかる場合は?これは設備資金の感じがしますよね?ではでは、20万円で外注したホームページ制作費は?果たして設備資金かなぁ・・・と、疑問が湧いてくるかもしれません。

そこでこんな疑問が・・・
「そもそも設備資金と運転資金で、融資が通りやすい、通りにくいはあるのか?」

そこで今回は、設備資金で申請するのか、運転資金で申請するのか、というお話を解説したいと思います。

※設備資金と運転資金の説明はこちらも参照して下さい。

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2021.07.16

設備資金で申請するメリット・デメリット

日本政策金融公庫のホームページを見ると、それぞれの融資制度による返済期間が掲載されています。公庫以外の金融機関においても、融資の相談をすると必ず、返済期間と金利の一覧表を見せてもらうことができます。これらを見ますと、全ての融資制度で、設備資金と運転資金に区分して返済期間が記載されていると思います。

そう、設備資金と運転資金とでは、そもそも返済期間が違うんです。

前述のとおり、設備資金は固定資産などを購入する際の多額の資金を借りることが前提となってますので、その分返済期間が長めに設定されているわけなんです。

ですから、設備資金で借りた場合のメリットは、返済期間を長めに取れることにあります。返済期間が長ければ当然、月々の返済額が安くなるので、当面の資金繰りがラクになりますよね。

一方、返済期間が長いということは、それだけ長い間おカネを借りていることになるので、その分支払う利息は総額で多くなります。これはデメリットと言えるかもしれませんね。

融資の審査に影響するのか?

では、設備資金で申請するか、運転資金で申請するかで、融資の審査に影響はあるのでしょうか?

資金の使い途

金融機関が融資をする際に、重視するポイントとして、資金の使い途というものがあります。これを「資金使途」と言います。

銀行や信用金庫などの金融機関は、金融庁の監督下にあり、日本政策金融公庫にいたっては、国が100%出資する株式会社です。したがって、その貸出先に対しては、厳しい審査が必要なわけです。当然、貸したおカネが不正に使われるなんてことはあってはいけません。

そこで、資金使途が重視されるわけです。極端な話、いくら業績が良い会社であっても、使い途が不明瞭なところには貸し出すことができません。

つまり、貸すための大義名分が大事なんです。

そこで、融資を申込む時の申請方法についてです。設備資金として申込む場合は、何にいくら使うかを明確にして申込まなくてはいけません。

もちろん、基本的に全ての設備資金について、見積書を添付する必要があります。したがって、資金の使い途が明確であり(不正に使われる心配がない)、貸出しをする大義名分がたつわけです。この点から考えると、運転資金より設備資金の方が審査は通りやすいという側面がうかがえます。

ちなみに、資金の不正利用というのは、何も犯罪的な利用だけを指しません。関係会社への貸付けや不要な接待交際費なども、金融機関から見た場合、適切なおカネの使い途とはみなされません。

ましてや、代表者への貸付けなど言語道断!
おカネを借りて、又貸しするわけですから、当然ですね。

見積書提示と資金使途違反

さて、前述のように、設備資金で借りるためには、原則として全ての見積書を添付する必要があります。「原則として」と言ったのは、場合によっては添付する必要がないこともあるということです。経験則として、50万円程度であれば添付不要ですが、それ以上は必ず添付が求められるようです。

ここで疑問が生じます。
見積りはあくまで見積もり。
実際に購入する時になって、多少は金額が変わってしまったとしてもいいのでしょうか?

実はダメ!なんです。
正確に言うと、
見積りを超える⇒OK
見積りを下回る⇒NG
です。

どういうわけか説明しましょう。設備資金は、何を買うか具体的に明示して、その見積書を添付しておカネを借りるわけです。そして、前述のとおり、金融機関はおカネの使い途に対して、非常にデリケートです。

そこで、まず絶対にNGなことをご紹介しましょう。例えば、設備資金で車両を購入すると言って、実際には購入しなかった場合。もう、これは完全にアウトです。

これを資金使途違反と言います。

「貸したおカネを、今すぐ耳を揃えて全額返してね!」ということになります。
※ただし、車両購入資金として申請した部分の金額に限ります。

では、車両購入資金として500万円を借りたが、実際には450万円になった場合はどうでしょうか?

この場合、50万円が宙に浮いてしまいますね。そこで使わなかった50万円を運転資金に回していいわけではありません。なぜなら、その50万円を車両購入以外で使うわけですから、立派な資金使途違反になるわけです。

では逆はどうでしょう。
500万円で借入れしたが、実際には550万円になってしまった場合などです。

この場合、足りない部分は自己資金などで手当てすることになりますから、資金使途違反にはなりません。だから、見積書を超える分にはOKなんです。

補足して説明しますと、そもそも設備資金で借りた場合は、その借入金は申込者に振り込まれることはなく、設備を購入する先の業者に直接振り込まれます。ですから、本当に申請した以外の使い途に充てることはできないんです。

運転資金の使い勝手の良さ

ここまで見てきたように、(1)設備資金は(資金使途が明確という観点から)融資の審査を通りやすく、(2)返済期間が長い、というメリットがあることがわかりました。

一方で、(1)利息の支払総額が多くなり、(2)申請した金額以外に使えない、(3)しかも見積もり金額と実際の金額をしっかり合わせる必要がある、というデメリットがわかりました。

では、運転資金はどうでしょうか?

実はこの逆で、非常に緩いのです。

基本的に経費ならば、何に使ってもいいんです。
よく「人件費に使う予定で計画書を申請したけど、人が採用できなかったから広告費に回してもいいですか?」というような質問を頂きます。

人件費用の借入金を広告費に使うわけですから、資金使途違反のような気がしますよね?

しかしこれ、OKなんです。

あくまで計画は計画です。
そもそも、ビジネスなんて計画どおりにいかないものです。

ですから、人件費用に借りたおカネを広告費に回した、などのように使用目的を変更することは、全然問題ないわけです。

では、運転資金で借りたのに、固定資産を購入してしまったら?

これもギリギリOKかなぁ?
という所です。

特に日本政策金融公庫の場合はOKです。

そもそもこちらの記事「借りたおカネはどうやって返すの?で書きましたが、設備資金と運転資金の明確な線引きはないんです。

運転資金では計画変更はOKなので、当初の計画を変更して設備を購入しても悪いとは言えないのです。

まぁ、あまり派手にやらない方がいいと思いますが・・・。

このように、フレキシブルに資金を使いたい、事務手続きを簡単に終わらせたい、という時には運転資金が有利。完全に使い途も金額も決まっていて、より確実に融資を通したいし、返済期間が長い方がいい、という時には設備資金が有利ですね!