会社設立の手順

「さぁ、会社を設立しよう!」と思っても、何から手を付けていいかわからない方も多いはず。会社設立の手続きは司法書士という専門家にお願いすれば、全て丸投げでも大丈夫です!また最近では、税理士事務所が司法書士と提携して、無料で設立手続きを代行してくれることもあります(※ただし実費はかかります)。

でも一応、基本的な流れは押さえておきたいですよね?そこで今回は、会社設立の手続きについて解説したいと思います。

商号決定

株式会社を作るとなったら、まずは会社名を考えなくてはいけませんよね?会社名のことを「商号」と言います。そして、商号を決めるにもいくつか注意点がありますので、お気を付け下さい。

社名に関する禁止事項

まず、必ず「株式会社」という文字を商号の前又は後ろにつけなくてはいけません。いわゆる「前株」、「後株」と言われるものですね。
これを前提として、下記のような社名は禁止されております。

 ・有名会社の社名
 ・「〇〇支店」、「〇〇支社」、「〇〇支部」など
 ・「〇〇銀行」、「〇〇信託」など

いずれも紛らわしさを避けるため、禁止されています。例えば、「株式会社ソニー」や「ワタミ株式会社」などの社名を付けることはできません。また銀行業でもないのに「株式会社〇〇銀行」などの社名をつけることはできません。ただし例外として、「〇〇バンク」は認められています。

一方、類似商号については、あまり気にしなくてよくなりました。旧商法時代は、同一市区町村における同一事業目的の同一商号、類似商号の会社設立は認められていませんでした。

しかし現行会社法では、同一市区町村における類似商号での会社設立が認められることになりました。もちろん、同一住所での同一商号は認められておりませんが、隣のビルのように住所が異なれば、同一商号でも設立できるようになったのです。

事業展開する上での注意点

いくら会社法上は自由に会社名を決められるからと言って、あまり安易に考えてしまうことはお勧めできません。なぜなら、会社名=会社の印象であり、ブランディングにも大きく関わることだからです。

会社名=会社の顔である以上、社名を聞いただけでどんな事業を行っている会社か分かる社名であることは、ブランディング戦略上、大いに有効です。その反面、会社規模が拡大して、事業を多角化展開したい場合には足かせになることもあります。例えば、「〇〇運送」という社名で、Webサイトデザイン事業はやりづらいですよね?

もちろん社名を変更することは可能ですが、銀行口座やホームページ、会社案内など全てを変えなくてはいけないので、大変な手間がかかります。

その点、社名を変えなくても、屋号を別に設けたり、商品名やサービス名を変えて印象を刷新するという手は非常に有効ですね。青山商事株式会社が「SUIT COMPANY」というブランドを展開してイメージを刷新したのは良い例ですね。

印鑑作成

3点セットとは?

会社を設立するにあたっては、印鑑を届け出る必要があります。そこで、通常は会社設立前に3点セットと呼ばれる印鑑を作成します。3点セットとは、代表印、銀行印、角印のことです。

代表印は法人の登記申請をする際に届け出る印鑑ですので、実印に相当します。この実印のだけでも問題はないのですが、一般的にはこれとは別に、銀行用に銀行印を用意します。また、請求書など簡易な書類に押印するための認印として、角印を作った方が便利です。この他、住所や電話番号が入った社判(親子印)も用意しておいた方が、何かと便利だと思います。

定款の作成

会社名が決まり、印鑑の準備ができたら、いよいよ定款を作成します。定款とは、ひとことで言ってしまえば、会社のルールブックというべきもので、会社の基本原則を定めたものになります。早速、作成にあたり特に注意したい点について書いていきたいと思います。

事業目的

事業目的とは、会社で行う事業内容のことで、必ず定款に記載しなくてはなりません。この時、設立当初に行う事業だけでなく、今後行う予定の事業も記載してかまいません。なぜなら、定款に記載した事業を必ず行わなくてはいけないというわけではないからです。

一方で、定款に記載のない事業は行うことができないため、新たに事業を開始する時は定款を変更しなくてはいけません。余計に手数料がかかりますし、手間もかかるため、今後の構想の中にある事業は記載しておくと間違いないでしょう。

また、許認可業務については、必ず記載しなくてはいけません。定款の事業目的に記載がないと、許認可を受けることができませんので、ご注意ください。

一方で、公序良俗に反する事業目的は記載することができませんので、ご注意ください。

本店所在地

本店所在地とは、本社の住所のことです。定款には最小行政区画のみの記載も可能です。最小行政区画とは、「東京都千代田区」のように、区画までの住所のことです。
本店所在地を最小行政区画にしておけば、例えばビルの名前が変わってしまったり、階数だけを移動したという場合に、定款を変更する必要がありません。

ただし、法務局へは正式な住所を届け出る必要があります。

また、会社設立時には本店の不動産物件が決まっていないということも多いと思います。その場合は、代表の自宅を本店とすることが多いです。ただし、自宅が賃貸物件である場合、賃貸契約書に「事務所利用不可」と書いていないか、ご注意ください。「事務所利用不可」の物件で本店登記してしまうと、契約違反になるばかりでなく、融資を受けたいという時、金融機関から融資を断られてしまうことになりかねません。

株式数

株式数を決める上で一番重要なことは、資本金をいくらにするかということです。現行の会社法では、資本金1円から会社を設立することが可能になりました。しかし、対外的な信用や融資を受けられる金額にも影響してきますので、最低でも100万円~300万円程度を準備しておきたいところです。

なお、税額との兼ね合いを考えますと、設立当初は1,000万円未満にした方が有利です。なぜなら、設立から2期目まで消費税が免税になるからです(※一部、例外あり)。
また法人住民税の金額も最低金額に抑えられるので、お得です。

ただし、許認可業務については資本金要件がある場合がありますので、注意が必要です。

資本金が決まれば、あとは株数を決めるだけです。1株の金額については、特に決まりはありませんが、1万円や5万円が多いようです。資本金が100万円の場合、1株=1万円なら株数は100株、5万円なら20株ということになります。

定款の認証

定款ができましたら、その書類の記載事項が適正であることを第三者に証明してもらう必要があります。これを「認証」と言い、公証役場で行います。

定款の認証は紙の定款の他に、PDFの定款で「電子認証」を行うこともできます。なお、電子認証を行った場合、紙の定款に貼る収入印紙4万円が不要になるので、お得です。

資本金の払い込み

資本金の払い込みは、特に煩雑なことはありません。まず、自分名義の口座に自分名義で振り込みます。例えば、資本金が100万円なら、100万円を振込むわけですが、この際、既に口座残高が100万円以上ある場合は、一度100万円を引き出して、再度その100万円を振込むという手続きを取ります。

振込が完了しましたら、通帳の表紙と1ページ目、更に払い込みをしたページの3点をコピーして、払込証明書を作成します。

この時、忘れてはいけないことがあります。それは、会社設立が完了したら、法人の銀行口座を開設しますが、その際、自分名義の口座に振り込んだ資本金を法人口座に移すことです。この作業をしないと、資本金が会社口座に振り込まれていない状態となり、会計処理としては、代表者にお金を貸していることになってしまいます。これは、「個人と会社のお金が区分されていない」という印象を与え、融資などが受けづらくなるので、注意が必要です。

会社設立登記

ひととおり、会社設立の書類ができたら、いよいよ設立登記に移ります。

登記書類

登記書類は下記の書類を作成し、発起人全員が法務局の窓口に持参して登記申請をします。
なお、委任状を作成すれば、司法書士などに代行してもらうことが可能です。

 ・登記申請書
 ・定款
 ・発起人の決定書
 ・取締役の就任承諾書
 ・代表取締役の就任承諾書
 ・取締役の印鑑証明
 ・資本金の払込みを証明する書類
 ・印鑑届出書
 ・登記すべきことを保存したCD-R

会社設立登記

資本金を払い込んでから2週間以内に法務局に登記申請を行わなくてはいけません。会社設立日は「登記申請をした日」になります。したがって、土日祝日は法務局がやっていないため、会社設立日にすることができません。

登記が完了したら、税務署に届け出を出します。具体的な手続きや書類のフォーマットはこちら!