信用保証枠を超えても融資は可能か?

会社経営をしていると、何かと資金が要りようになります。さきざきのためにできるだけ多く借りておきたいというのが、経営者の共通認識ではないでしょうか?

今回は、将来に備えて、または多額の設備投資や研究開発などでより多くの資金を借りたい!という方のために、多額の融資を受けるための秘訣について、お話したいと思います。

創業先生
会社経営をしていると、とにかく予期せぬことでお金が出ていきます。資金は潤沢にあればあるほど、いいですね!
起業太郎
例えば、どんなことがありましたか?
創業先生
新たな商品開発をしている矢先に、売上先が倒産して、多額の売上代金が回収できなくなった!なんてことがありましたね。
創業先生
ほかには、制作会社の例ですが、突然いままで取引したことないような大手企業から、大型案件を受注してしまった、なんてこともありました。
起業太郎
ビジネス拡大のチャンスじゃないですか!?
創業先生
そうなんですが、制作物を作るには、先に多額の資金が必要ですよね?それで資金調達に苦労した、なんてことはよくあります。
起業太郎
なるほど~。そういうことは、建設会社とかでもありそうですね。

信用保証枠とは?

個人事業主や中小企業が融資において不利なのは、実績や信用力が弱いことにあります。

金融機関が融資をする際に最も気にするのは、「貸したお金が返ってくるか?」という点につきます。

そこで、金融機関が個人事業主や中小企業にも安心して貸出ができるよう、信用保証協会が保証をするという制度が設けられています。

信用保証協会とは?

信用保証協会とは、創業者や中小事業者などの事業者に対する金融の円滑化を図ることを目的として設立された公的機関です。

わかりやすくいうと、信用保証協会は個人事業主や中小企業が融資を受ける際、事業主に代わり、その債務の保証人になってくれることで、融資が円滑に下りるようにする役割を担っています。

つまり、公的な機関である信用保証協会が、事業者の連帯保証人になってくれるので、民間の金融機関も安心して融資することができる、というわけです。

信用保証協会は全国47都道府県に1か所ずつと、横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市の4市にあります。

最寄りの信用保証協会は、全国信用保証協会連合会の公式サイトにある「お近くの信用保証協会」から探すことができるので、信用保証協会の窓口で相談したい方は、こちらから調べてみましょう。

信用保証枠はどれくらいか?

さて、信用保証協会が債務の保証をしてくれるということですが、上限なく無限に保証してくれるわけではありません。

当然、保証金額の上限があるわけで、この上限金額のことを「信用保証枠」と言います。

保証種類個人・法人組合等
普通保証2億円4億円
無担保保証8,000万円8,000万円

普通保証とは、担保がある場合の保証のことです。

創業当初などは特に、担保がないことが多いと思いますので、その場合は個人・法人、組合等を問わず、8,000万円が上限となります。

また、この保証枠というのは、あくまでも「上限」のことです。

どのような事業者でも、無担保で8,000万円まで保証してもらえるということではありません。

常識的に考えて、例えば年商3,000万円規模の事業者が、8,000万円を無担保で保証してもらい、融資を受けるということは非現実的です。

実際には、その業種や事業の実態、財務状況を鑑みての判断となります。また、あくまでも目安ですが、「年商1億円で2,000万円程度の枠」と考えておくと良いでしょう。

もちろん、赤字や債務超過の状態にあるなどですと、枠は小さくなりますので、ご注意下さい。

信用保証枠を広げる方法

さて、事業規模が小さかったり、創業当初でまだ信用保証枠が小さいから、大きな借入ができないということはよくありますよね?

また、すでに信用保証枠の上限まで借りてしまっていて、これ以上の追加融資が受けられない!とお困りの方もいるかもしれません。

起業太郎
信用保証枠がいっぱいじゃ、債務の保証をしてもらえないから、追加融資は無理ですよね?
創業先生
あきらめるのは、まだ早いです。実は、そうではないんです!
信用保証枠を別枠で広げる方法があるんです!

実は、信用保証枠には通常枠のほかに、別枠が設けられています。条件を満たせば受けられるものと、条件に関係なく、計画認定を受けることで別枠の保証を付けられるものとがあります。

条件を満たせば受けられるものは、おもに緊急事態に備える救済措置という意味合いですので、すぐに別枠の保証を受けることができます。

一方で、計画認定を受けるものは、積極的な事業活動を応援してもらう制度ですので、計画を作成して認定を受けるまで多少の時間を要します。

セーフティネットで別枠を確保

セーフティネット保証とは?

セーフティネット保証制度とは、外部要因などによって経営の安定に支障が生じている中小企業者に対し、信用保証協会を通じ、一般の信用保証枠とは別枠で保証を行うことで、資金調達の円滑化を図る制度です。

この要因については、中小企業信用保険法で定めており、下記の1号から8号までの分類があります。

セーフティネットの分類
  • 1号:連鎖倒産防止
  • 2号:取引先企業のリストラ等の事業活動の制限
  • 3号:突発的災害(事故など)
  • 4号:突発的災害(自然災害など)
  • 5号:業況の悪化している業種(全国的)
  • 6号:取引金融機関の破綻
  • 7号:金融機関の経営の相当程度の合理化に伴う金融取引の調整
  • 8号:金融機関の整理回収機構に対する貸付債権の譲渡
  • 具体例として、1号、2号、4号、5号について、概要をご説明したいと思います。

    セーフティネット1号

    民事再生手続開始の申立等を行った大型倒産事業者(経済産業大臣指定)に対し売掛金債権等を有していることにより資金繰りに支障が生じている中小企業者を支援するための制度です。

    要するに、取引先が倒産したことにより売上代金が回収できなくなり、連鎖倒産してしまうことを防ぐために、信用保証を行い融資を円滑化することを目的としています。

    対象中小企業者として、売掛債権金額または当該事業者との取引規模に関して要件があります。

    セーフティネット2号

    生産量の縮小、販売量の縮小、店舗の閉鎖などの事業活動の制限を行っている事業者と直接・間接的に取引を行っていること等により、売上等が減少している中小企業者を支援するための措置です。

    要するに、取引先が取引規模を縮小したことにより売上等が減少してしまい、資金繰りに支障が生じている中小企業者を支援するため、信用保証を行い融資を円滑化することを目的としています。

    対象中小企業者として、当該事業者との取引依存度および売上高減少割合などに要件があります。

    セーフティネット4号

    突発的災害(自然災害等)の発生に起因して売上高等が減少している中小企業者を支援するための措置です。

    東日本大震災や福島県沖を震源とする地震の対策にも活用されたとおり、基本的には地域の指定や売上・販売数量の減少要件などがあります。

    しかし、新型コロナウイルス感染症対策融資としても利用され、その時は全国が対象地域となりました。

    セーフティネット5号

    (全国的に)業況の悪化している業種に属する中小企業者を支援するための措置です。

    平成22年2月15日より景気対応緊急保証制度が実施されており、原則全業種が対象となっています(農林水産業、金融業など法令上の対象外業種などはのぞかれます)。

    対象中小企業者として売上高減少割合、売上総利益率または営業利益率の減少割合、仕入価格上昇を価格転嫁できないなどの要件があります。

    こちらも、東日本大震災に係る中小企業の資金繰り支援や新型コロナウイルス感染症対策融資として利用されました。

    別枠保証限度額

    セーフティネットの別枠保証限度額
  • 普通保証:2億円以内
  • 無担保保証:8,000万円以内
  • 経営力向上計画で広げる

    中小企業等経営強化法に基づく支援として、経営力向上計画の認定を受けますと、優遇税制や金融支援が受けられます。

    「経営力向上計画」とは、中小企業・小規模事業者や中堅企業が人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画で、事業分野別の主務大臣に認定されたものを言います。

    金融支援としては、政策金融機関の融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証等の資金調達に関する支援を受けることができます。

    日本政策金融公庫による融資

    経営力向上計画の認定を受けた事業者が行う設備投資に必要な資金について、融資を受けることができます。

    貸付金利(中小企業事業)   基準金利(ただし、設備資金(土地及び建物を除く)については、2億7,000万円を限度として特別利率②)
    貸付金利(国民生活事業)基準金利(ただし、設備資金(土地及び建物を除く)については、特別利率B)
    貸付限度額(中小企業事業)      7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円)
    貸付限度額(国民生活事業)7,200万円(うち運転資金4,800万円)
    貸付期間設備資金20年以内、長期運転資金7年以内(据置期間2年以内)

    中小企業信用保険法の特例

    特定事業者は、経営力向上計画の実行(※)にあたり、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大が受けられます。
    (※)新商品・新サービスなど「自社にとって新しい取組」(新事業活動)及びM&A等による事業承継(デューデリジェンスを含む)に限ります。

    通常枠別枠
    普通保険2億円(組合4億円)2億円(組合4億円)
    無担保保険8,000万円8,000万円
    特別小口保険2,000万円2,000万円
    新事業開拓保険2億円→3億円(保証枠の拡大)
    海外投資関係保険2億円→3億円(保証枠の拡大)
    (※)経営力向上計画において、一定の財務要件を満たすことの認定を受けた企業であって、事業承継等に必要な資金に係る信用保証の申込において、保証申込み直前の事業年度決算においても一定の財務要件等を満たす場合には、経営者保証は不要。

    経営革新計画で広げる

    経営革新計画も、中小企業等経営強化法に基づく支援として金融支援を受けることができます。

    中小企業等経営強化法で規定する「経営革新」とは、「事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること」をいいます。(中小企業等経営強化法 第2条第9項)

    「新事業活動」とは?

    「新事業活動」とは、次の5つの「新たな取り組み」をいいます。

    セーフティネットの別枠保証限度額
    1. 新商品の開発または生産
    2. 新役務の開発または提供
    3. 商品の新たな生産または販売方式の導入
    4. 役務の新たな提供の方式の導入
    5. 技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動

    「経営力の相当程度の向上」とは?

    次の2つの指標が、事業期間の3年~5年で、相当程度向上することをいいます。

    1. 「付加価値額」又は「一人当たりの付加価値額」の伸び率
    2. 「給与支給総額」の伸び率
    「付加価値額」または「一人当たりの付加価値額」の伸び率        「給与支給総額」の伸び率          
    事業期間が3年の場合      9%以上4.5%以上
    事業期間が4年の場合12%以上6%以上
    事業期間が5年の場合15%以上7.5%以上

    日本政策金融公庫の特別利率による貸付

    中小企業事業

    新事業育成資金新事業活動促進資金
    貸付限度額7億2,000万円設備資金7億2,000万円
    (うち運転資金2億5,000万円)
    貸付利率基準利率▲0.9%基準利率▲0.65%

    国民生活事業

    新事業活動促進資金
    貸付限度額設備資金7,200万円
    (うち運転資金4,800万円)
    貸付利率基準利率▲0.65%
    担保・保証人希望に応じて要相談

    中小企業信用保険法の特例

    経営革新計画の承認を受けた特定事業者は、①普通保証等の別枠設定と②新事業開拓保証の限度額引き上げを受けられます。

    通常枠 別枠
    普通保険 2億円(組合4億円) 2億円(組合4億円)
    無担保保険 8,000万円 8,000万円
    特別小口保険 2,000万円 2,000万円
    通常組合
    新事業開拓保険2億円→3億円(保証枠の拡大)4億円→6億円(保証枠の拡大)

    このように、金融支援に関する優遇は、ほとんど経営力向上計画と同じ内容となっています。

    まとめ

    ここまで見てきたように、信用保証枠がいっぱいになってしまっても、別枠で信用保証をしてもらえる制度が多々用意されているので、あきらめず利用できる制度を検討してみるといいですね。