そこで今回は、創業時の資金調達方法について、解説したいと思います。
目次
資金調達の種類
資金調達は大きく分けて、以下の3つに分類することができます。
- 融資・・・お金を借りること。
- 出資・・・株式を発行したり、VCにお金を入れてもらうこと。
- 補助金・助成金・・・国や自治体が費用の一部を援助してくれる。
上記のうち、①は返済する必要がありますが、②と③は返済の必要がありません。
融資とは?
融資とは、お金を借りること、つまり借金のことです。
創業当初の借入金というと、親戚縁者や知人からの借入を想像するかもしれません。しかし、親戚などからの借入では、あまり大きな金額は望めませんし、その後の人間関係にも影響を及ぼします。
そこで一般的には、銀行や信用金庫などの金融機関や政府系金融機関といわれる日本政策金融公庫からお金を借りることが一般的です。
借入金ですから、もちろん金利がかかります。また返済の義務も生じます。
しかし、日本政策金融公庫などの金利は比較的低めに設定されております。
借入金というと、マチ金や闇金といった怖いイメージがあるかもしれませんが、このような高金利の借入金ではないので、ご安心下さい。
・一般的には、銀行や信用金庫などから借ります
・日本政策金融公庫など、政府系金融機関から借りることも一般的です
出資とは?
出資とは、資本家などからお金を支援してもらい、事業資金を調達することをいいます。
通常は株式を発行し、その株を購入してもらうことが一般的です。もちろん、第三者の資本家だけでなく、自己資金を出資して、会社に入れることも可能です。
ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家に出資してもらうことが多いですが、最近ではクラウドファンディングなどによる出資により資金調達するケースも増えてきております。
出資による資金調達は、返済する必要がないというメリットがあります。その一方で、経営権を握られたり、配当を出さなくてはいけないというデメリットもあります。
・VCやエンジェル投資家から出資をしてもらいます
・最近ではクラウドファンディングによる調達も増えてます
・返済する必要がないというメリットがあります
・経営権を握られるデメリットがあります
・配当を出さなくてはいけません
補助金とは?
補助金とは、事業資金の一部を国が補助してくれる制度で、その財源は税金です。
基本的には経済産業省が管轄となり、創業促進や様々な国策の促進のために支給されます。
国からお金が”もらえる”制度なので、基本的に返済不要です。
税金を投入し、返済不要のお金を補助するわけですから、無作為に支給されるものではありません。あくまでも国策に応じた事業に補助されます。
例えば、IT導入による事業の効率化や小規模事業者が地道な販路開拓等を行い、持続的な経営を目指す取り組みに対して支給するなど、一定の要件があります。
また、単純にお金がもらえるわけではなく、あくまでも支出した経費の一部を補てんするものですので、「先に支払い、後から補助を受ける」というイメージになります。
補助金が特徴的なのは、申請すれば必ずもらえるものではなく、審査員が審査した上で「補助するに値する」と判断された事業だけが対象となります。
審査合格率(これを採択率といいます)は、補助金にもよりますが、大体40%程度ですので、わりと狭き門と言えそうです。このような点から、補助金はどちらかというと、ビジネスコンテストのようなイメージに近いと言われています。
また、通常は常に募集しているわけではなく、年に数回程度の公募を設けており、その募集回ごとに締め切りがあります。
・要件を満たした経費の一部を補助(お金を支給)してくれる
・返済は不要なのがメリット
・管轄は基本的に経済産業省
・必ずもらえるものではなく、合格率は40%程度
・例外はあるが、基本的には年に数回の募集であり、通期の募集ではない
助成金とは?
補助金と似て非なるものが助成金です。
まず大きな違いは、管轄が厚生労働省であり、その財源は社会保険料であるという点です。
これはつまり、助成金をもらうためには、従業員を雇用し、社会保険に加入する必要があるということです。
助成金についても、補助金と同様に返済不要です。したがって、同じく無作為に支給されるわけではなく、国策に応じた取り組みに対してお金が支給されます。
例えば、正社員の雇用促進に向けた取り組みや時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備などに対し、助成金を支給する、などです。
助成金が特徴的なのは、補助金と異なり、基本的に要件を満たせば必ずもらえるという点です。また、補助金のように募集回と締め切りが決まっているわけではなく、通期募集(常に申請可能)という点も異なります。ただし、助成金ごとの申請締め切り(手続きの締め切り)はありますので、ご注意下さい。
・要件を満たせば必ずもらえる
・返済は不要なのがメリット
・管轄は厚生労働省
・従業員を採用する必要がある
・常に募集している
融資の具体的な方法
日本政策金融公庫の融資
創業当初は金融機関からお金を借りようとしても、なかなか融資を受けられることはありません。
融資を受けるには、今までの業績や信用力が重要ですが、創業当初はそもそも事業実績がないからです。
そこで、民間金融機関が取り扱いづらい融資を引き受ける金融機関として、政府系金融機関があります。日本政策金融公庫は代表的な政府系金融機関であり、国が100%出資している金融機関です。
日本政策金融公庫では、新創業融資という制度を設けており、創業間もない事業者に対しても、融資の間口が開かれています。公庫の姿勢としては、おおむね自己資金の3倍程度の金額が融資の目安であり、多くても1,000万円までと考えております。ただし、新創業融資の制度としては、最大で自己資金の9倍までの融資が可能となっておりますので、諸条件を勘案して、検討したいですね。
保証協会付き融資
信用保証協会が信用保証をしている融資を総じて、「信用保証付き融資」とか「マル保」と呼んでいます。
創業間もなく信用力が低い事業者は、保証や担保なしではなかなか融資を受けるのが難しいです。
そこで、信用保証協会というところが、事業者の代わりに債務の保証人になってくれ、規模の小さい事業者や実績の乏しい事業者への融資を円滑にしています。
信用保証協会は、創業者や中小企業者などの事業者に対する金融の円滑化を図ることを目的として設立された公的機関です。
つまり、公的な機関である信用保証協会が、事業者の連帯保証人になってくれるというわけです。
なお、保証協会を利用した場合には、金利のほかに「信用保証料」という料金がかかります。
また、万が一経営が破綻した場合、信用保証協会が代わりに金融機関に弁済をしてくれますが、事業者は信用保証協会に対して弁済しなくてはいけません。
制度融資
制度融資とは、自治体と信用保証協会、指定金融機関の三者が協調して行う融資制度で、中小事業者が金融機関から融資を受けやすくする制度のことです。
制度融資の場合、自治体が融資を後押ししてくれる点に特徴があります。
具体的には、前述の信用保証料の一部を自治体が負担してくれたり、金利の一部を自治体が補給してくれるなどの支援があり、事業者の借入コストを軽減してくれる役割を担っております。
また東京都の場合、融資原資の一部を金融機関に預託してくれるため、金融機関としては融資を出しやすくなります。
出資の具体的な方法
ベンチャーキャピタルからの出資
ベンチャーキャピタルとは、複数の投資家から集めたお金をベンチャー企業に投資する事業を行う投資会社のことです。
出資をしてもらうわけですから、当然そのお金を返す必要はありません。そこで、とても美味しい話であるかと思いがちですが、いろいろと注意しなくてはならないことがあります。
まず、ベンチャーキャピタルは、投資先の企業が成長し上場を達成した場合には、その株式を売却してキャピタルゲイン(株式の売却益)を得ることを目的としております。
したがって、上場を達成できるよう、厳しく経営に口出しをしてきます。また株式を発行して出資を受けるわけですから、経営権はベンチャーキャピタルに握られることになります。
エンジェル投資家からの出資
エンジェル投資家とは、スタートアップ企業などのベンチャー企業に投資する個人投資家のことです。
ベンチャーキャピタルのように組織として投資を行っているわけではないので、必ずしも上場を目指してキャピタルゲインを得ることを目的としているわけではありません。
一方で、ベンチャーキャピタル同様に、出資をしてもらうわけなので、そのお金を返済する必要はありません。
ただし、株式を発行して出資を受けるわけですので、法的には経営権を握られることになります。
あまり経営に口出ししないエンジェル投資家もいますが、厳しく口出しをしてくる人もいるので、自由な経営が阻害されてしまうリスクがあることは覚えておいた方がよさそうです。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、プロジェクトの内容に共感した支援者からインターネット上で広く資金を集める資金調達方法です。一人ひとりの支援者は出資する金額が少ないので、気軽にプロジェクトを支援できる点がポイントです。
一方で、かなり多くの人から資金を集めないと目標額に達しないため、調達できる資金としては、数十万~数百万程度であることが多いです。
資金提供をした支援者に対しては、分配金や株式などの金銭的なリターンや、商品やサービスの提供などがお礼として行われることが一般的です。
ただし、金銭的なリターンや商品・サービスの提供が不要な、寄付型のクラウドファンディングもあります。こちらは、被災地支援や発展途上国への支援など、社会貢献度の高いものが多いのが特徴です。
資金調達手段ごとのメリット・デメリット
融資のメリット・デメリット
融資のメリットは、資金調達までの期間が短く、比較的すぐに必要な資金を調達できる点にあります。利用する制度にもよりますが、おおむね1~2.5か月程度で着金してもらうことが可能です。
また資金規模も多めに資金調達することが可能です。うまく制度を活用すれば、1,000~3,000万円程度といった多額の資金調達も可能となるケースもあります。
資金調達のハードルですが、信用情報(支払い遅延や税金の滞納)に問題がなければ、かなり資金調達しやすい方法となります。
一方で、金利を支払わなくてはいけないことや返済義務が生じることがデメリットです。そのほか、信用保証協会を利用した場合、信用保証料を支払う必要があります。
また万が一、経営破綻をした場合、その債務に対する責任を負わなくてはいけないこともデメリットです。ただし、日本政策金融公庫の新創業融資制度は、無担保・無保証なので、一部例外の制度もあります。
メリット | デメリット |
出資のメリット・デメリット
出資のメリットは、なんといっても返済義務がないことです。また、経営に関するノウハウがある投資家が出資してくれた場合、適切な助言をくれたり、有益な人脈を紹介してくれるといったメリットもあります。
調達できる資金規模に関しては、まちまちです。ベンチャーキャピタルなどの場合、かなり多額の資金を調達できるので、ビジネスを一気に成長させることができます。一方で、エンジェル投資家の場合は、あくまで個人投資家なので、調達できる資金規模にも限りがあります。
また、クラウドファンディングの場合、一人ひとりの支援金額は少額ですので、よほどの人数を集めない限り、調達できる金額は少額であるケースがほとんどです。
出資のデメリットですが、株式を発行して出資を受けることがほとんどですので、経営権を握られるというデメリットがあります。かなり厳しく経営に口出しされることもあり、自由な経営が阻害されることがあります。
また、必ずではありませんが、配当金を支払う必要もあります。
資金調達の難易度はというと、かなりハードルが高いです。ベンチャーキャピタルからの出資の場合、そもそも株式を上場させることが目的ですので、ビジネスモデルや経営者の経歴、資質が厳しい目で判断されることになります。
エンジェル投資家の場合も、見ず知らずの人にお金を出すわけですから、やはり厳しい目で判断されることになります。また、エンジェル投資家の場合は、「出資するから一緒にビジネスをやろう!」と甘い言葉で誘ってくる投資詐欺もあるので、注意が必要です。
資金調達できるスピードについても、かなりの時間を要します。ベンチャーキャピタルや投資家を探し、プレゼンして合意を得るわけですが、その後デューデリジェンス(財務状況やリスクの調査)を行ったり、契約の諸条件を決めるので、とても難易度が高いと思ってください。
これに比べてクラウドファンディングは、共感を得ることがすべてです。より多くの人から共感を得ることで資金を集められるということがポイントです。こちらも、かなりハードルが高いですが、ベンチャーキャピタルと比べると、難易度は低く、必要な期間も短いと言えます。
メリット | デメリット |
補助金のメリット・デメリット
補助金のメリットも、返済義務がないということです。また、経済産業省がお墨付きをつけるわけですから、ビジネスや会社に対する信用が上がります。
審査に合格(これを採択といいます)すると、その事業者の名前とプロジェクト名が公的に発表されるので、PRにも使えるでしょう。
また、採択された場合、一定の金額がもらえることが明確になるので、金融機関からの融資を受けやすくなるというメリットもあります。
一方で、難易度が高いというデメリットもあります。補助金の種類や募集回にもよりますが、採択率は40~60%となっており、必ずもらえるものではないということを念頭に置いて下さい。
また、補助金はあくまで、使った費用の一部を援助してくれる制度になります。したがって、お金が先に出ていき、後からそのお金の一部を補給してもらえるというイメージになります。
資金調達の期間ですが、補助事業の期間によりますが、1年近くかかるものもありますので、補助金が着金されるまでの資金繰りには注意が必要です。
メリット | デメリット |
助成金のメリット・デメリット
助成金も返済が不要であり、補助金と似ている側面があります。助成金が補助金と異なるのは、要件を満たせば必ずもらえるという点と、財源が社会保険であるため、従業員の雇用が条件となっていることです。
したがって、資金調達の難易度は低いのですが、金額も数万円~数十万円程度と、少なめとなっております。また着金までの期間ですが、1~1.5年程度のものが多く、非常に長い時間がかかるので、目先の資金繰りの確保には向きません。
メリット | デメリット |
まとめ
様々な資金調達手段がありますが、判断要素としては、(1)返済義務があるか、(2)どのくらいの金額を調達できるか、(3)着金までに要する期間が長いか、(4)資金調達の難易度は高いのか、というポイントが主な判断基準になるかと思います。
補助金や助成金は返済が不要という点では非常に魅力的ですが、着金までに時間がかかるので、それまでのつなぎの資金繰りを融資に頼るなど、複数の資金調達手段を上手に組み合わせることが成功のカギと言えます。
そうだ、会社案内やパンフレットも作らないと・・・。