公庫の融資は面談が大事、は本当か!?

融資審査は書類が8割!

日本政策金融公庫の事業融資の申込みをする際には、まず申込書類を提出し、その後支店を訪問しての面談が行われ、最終的に融資可否の審査が下されます。面談というと、就職の面接のようなものを想像される方もいるので、「変なことを言って、審査に落とされたらどうしよう?」「上手に事業のアピールをできるだろうか?」などと不安になり、ついつい緊張してしまいますよね?

実際に、「融資の面談では事業者としての人となりを見ている」ですとか、「経営者としての資質を見られている」などと巷では言われています。このようなことを聞くと、余計に委縮してしまいそうです。

しかし、これらの情報は都市伝説のようなもので、だいぶ事実とは異なります。
実際に、融資の面談でチェックしているのはもっと別の項目であり、「事業者としての人となり」や「経営者としての資質」というものより、もっと重視しているポイントがあるのです。

結論から言ってしまえば、公庫の融資審査では書類が非常に重視されており、面談の前に提出する申込書類で8割程度、融資ができるか否かが決まっております。

公庫融資の真実
・公庫の融資は書類審査が8割!
・融資面談が重視されている、はウソ!
・事業者の人となりより大事なことがある!

公庫融資申込みの流れ

まずは公庫融資の申込みにつきまして、その手順を見ていきましょう。

最初に会社設立or個人事業は開業届

創業融資の場合、法人で融資を受けるのであれば、まずは法人を設立します。
ちなみに、具体的な法人設立の手順につきましては、こちらの記事もご参照下さい。

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会社の設立手順を詳しく知りたい!

会社設立の手順

2021.07.07

なお、法人設立登記前ですと、通常は事務所物件を借りることができませんので、まずは自宅などを本店所在地として会社設立します。その後、設立登記が完了したら、事務所の賃貸契約をして、本店異動登記をしなおします。

一方、不動産屋さんが設立登記前でも契約をしてくれる便宜を図ってくれることもあります。その場合には、最初に個人名義で賃貸借契約を結ぶことが一般的ですので、設立登記完了後、賃貸借契約の名義を変更することとなります。

ちなみに、個人事業主の方は登記は必要ありませんので、税務署への開業届を提出するだけでOKです。

この時、税務署提出用とご自身控え用の2部を用意し、必ず控え用書類に税務署の収受印を押印してもらってください。税務署への提出書類はすべて、この収受印がないと、正式なものと認められませんので、ご注意下さい!

開業時の注意事項
・法人は、設立登記後でないと事務所契約はできない
・設立前に契約できたら、名義変更を忘れずに!
・個人事業主は税務署への開業届でOK!
・税務署の書類には、必ず収受印をもらうこと!

事業計画を立てる

会社設立が完了しましたら、事業計画を立てます。

事業計画といいますと、パワポでプレゼン資料のようなものを作る方がいますが、公庫の求めている事業計画はちょっと違います。

公庫も含め、金融機関が重視するのは、(1)どのようなことにお金を使うのか?(2)ちゃんとお金を返せるのか?という2点です。したがって、ここでいう事業計画というものは、数値計画です。具体的には、損益計算書、資金繰り表に加え、簡単な貸借対照表も用意できるといいでしょう。

もちろん、パワポのプレゼン資料があっても良いのですが、その際は(1)代表者の経歴、(2)会社概要、(3)どのように売上があがっていくかを根拠とともに示す、という程度で構いません。

融資の審査担当者は忙しいので、分厚くて長い資料は嫌われます。

必要書類を揃え、提出

事業計画ができましたら、必要書類を揃えて、公庫に提出します。必要書類につきましては、後述しますが、書類を提出する前に、ご自身の信用情報を確認しておくと良いでしょう。

個人信用情報としては、CICやJICCが有名ですが、郵送や窓口での取得のほか、サイトよりPDFでダウンロードも可能です。なお、CICの公式サイトは下記となりますので、こちらから取得をして頂ければと思います。

https://www.cic.co.jp/mydata/index.html

さて、必要書類を揃え、個人の信用情報を確認しましたら、書類の提出です。

融資の申込み窓口には、(1)国民生活事業と(2)中小企業事業の2つがあります。
どのような違いがあるかと言いますと、国民生活事業は比較的小規模な事業者、中小企業事業はやや規模の大きい事業者が申し込むといったイメージです。「やや規模が大きい」に明確な基準はありませんが、「年商5億円以上」がひとつの目安と言われています。

なお、書類の提出は郵送でかまいません。

公庫の書類提出先
・国民生活事業・・・比較的小規模な事業者が申し込む
・中小企業事業・・・年商5億円以上など、中規模の事業者が申し込む

融資担当者との面談

書類を郵送しますと、公庫の融資審査担当者から電話がかかってきます。そこで、面談の日時を決定し、後日、公庫の支店窓口を訪問して面談となります。なお、書類郵送から1週間がたっても電話がない場合、なにかの行き違いがあるかもしれませんので、公庫の支店に電話をして確認してみてください。

ちなみに、先日郵送で提出した書類を見た結果、融資担当者が個別で確認したい事項というものがでてきます。そこで、その確認事項に合わせて追加で書類を求められることがありますので、面談前に追加書類を揃えて面談に臨むようにしてください。

審査書類には何があるか?

では、一般的な審査書類には何があるでしょうか?まずはリストアップしていきたいと思います。

✓借入申込書
✓創業計画書・企業概要書
✓資金繰り計画書
✓事業に必要な許認可証
✓不動産賃貸契約書
✓登記簿謄本や開業届など
✓印鑑証明
✓確定申告書・決算書など
✓身分証明書

ざっと列挙しますと、このようなものがあげられます。

このほか、面談の際には通帳の原本、公共料金や税金の支払いがわかる領収書などを持参するように言われますので、準備をしておくと良いと思います。

なお万が一、公共料金や税金を支払った時の領収書を忘れてしまった場合の対処法は、下記の記事に書きましたので、ご参照下さい。

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面談では何を見ているのか?

さて、ここまで融資申込の流れを見てきましたが、次に、よく言われる都市伝説、”公庫の融資は面談が大事!”について、検証していきたいと思います。

起業太郎
面談なんて、緊張するなぁ・・・。融資は面談重視っていうし・・・
融資担当
いいえ、融資の審査は事前に提出された書類で8割は決まってます!
起業太郎
そうなんですか!?よく、経営者としての資質や人となりを見られるといいますよね?ボクはキャラが薄いんで心配で・・・
融資担当
キャラが薄いかはしりませんが、面談で重視しているのは、もっと違う点です。
ズバリ!事前書類のチェックです。
融資担当者は事前書類ですでに、仮説を立てて融資の方向性を決めています。面談では、その仮説が正しいかをチェックしているのです

そうなんです。公庫の融資においては、事前に提出された書類で、融資担当者はおおむね、融資の方向性を決めています。

融資できるのか、断るのかという結論から、融資するならいくらまでか、返済期間や金利などの条件など、大まかな方向性を決めています。

そのうえで、「面談でこういう事実が出てきたら、やっぱり断ろう」ですとか、逆に「融資は難しそうだが、こういう事実があるなら融資してみよう」というように、仮説を立てています。

面談は、その仮説を答え合わせし、追加で懸念事項がないか、または融資の可能性を広げられないかをチェックしているのです。

これで、いかに事前に提出する書類が大事かということがわかるかと思います。

なぜ書類が重視されるのか?

では、なぜ書類が重視されるのでしょうか?

これは公庫の職員の仕事事情が関係します。
公庫の融資担当者は膨大な仕事を抱えております。
大体、1日あたり1件の融資面談をこなし、1日あたり1件の融資案件の処理をしなくてはいけません。

そして、このペースが乱れ、案件が滞留してしまいますと、どんどん業務が貯まっていき、仕事が回らなくなってしまうのです。

ですから、効率的に案件を”さばく”ためにも、事前の書類でおおまかに融資の方向性を決め、面談で確認事項をチェックしていくという方法を取っているのです。

つまり、事前の書類では、いかに「この人に融資をして大丈夫かな?」という懸念事項を払拭するかがカギなのです!

最低限おさえたいこと

では、事前の申込書類では何が大事なのでしょうか?

公庫の融資担当者の目線としては、「この人にお金を貸しても大丈夫か?」というものです。
基本的には、公庫の融資担当者は融資を出して、事業を応援したいのです。

そこで、大事なのは、「私にお金を貸しても大丈夫ですよ」とアピールすることです。最低限おさえておきたいポイントをまとめると・・・

書類作成のポイント
・代表の経歴、経験こそすべて!
・事業の内容をとにかく簡単に!
・お金の管理にだらしなくないですよ!
・売上見込みを根拠を持って!
・不正はなく誠実ですよ!

どうでしょうか?
お金を貸す側の立場になってみると、よくわかると思います。これらのことが最低限わからないと、怖くてお金を貸せないのです。

なお、融資審査でアピールしたいポイントについては、こちらの記事にも詳しく書いてます。

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融資審査でアピールしたいこと

融資審査でアピールしたいこと

2022.04.08

お金を貸す側は返ってくるか?が一番心配です。

そこで、代表者に十分な経験があり、売上見込みが明確であることが安心材料になります。

また、事業の内容が複雑でわかりづらいと、担当者はイメージしにくいのです。小難しいビジネススキームよりも、簡単シンプルなビジネスモデルが好まれるのも無理からぬことなのです。