社会保険の加入義務と保険料の負担とは?

自分で事業をするとなると、税金の問題のほかに、社会保険の問題が出てきますよね?

起業太郎
税金に社会保険・・・いろいろと支払いがあって大変だなぁ!
ところで社会保険って何?税金とは違うの?
正直、詳しいことはわからないんだよなあ・・・
創業先生
はい、そういうお声をよく聞きます。
そこで今回は、中小事業者が知るべき、社会保険制度の内容や、保険料の金額について解説したいと思います。
創業先生
保険料の負担の大きさは、けっこう強烈ですよぉ~。

社会保険とは?

ひとくちに社会保険といっても、実は「広義の社会保険」と「狭義の社会保険」があります。しかし、ここでは話をシンプルにするため、「狭義の社会保険」の観点から、ざっくりとご説明したいと思います。

創業先生
難しい話は抜きです(笑)

社会保険というと、会社に勤めている人が加入するものというイメージがあると思います。

ざっくりと、そのイメージで間違いありませんが、内訳はもう少し細かく分かれています。以下に、その区分と内訳を列挙したいと思います。

狭義の社会保険
・厚生年金
・健康保険
・介護保険
労働保険
・雇用保険
・労災保険

実はこの5種類をまとめて、一般的には社会保険と呼んでいます。

サラリーマンであれば、毎月の給料から、これらの保険料が天引きされ、差引き後の手取り額が振り込まれているはずです。

しかし、実は健康保険、介護保険、厚生年金の3つは「労使折半」といって、給料から天引きされている(すなわちサラリーマン本人が負担している)のは、保険料の半額です。もう半分の保険料は、会社が負担してくれているんです。

創業先生
重要なので、言い直します。
会社が負担してくれているということは、従業員を雇う立場の会社から見た場合、保険料を負担しなくてはいけないということです。

さて、会社の保険制度についてはわかったので、個人事業主ではどうなっているんでしょうか?

個人事業主の場合、社会保険に加入することができません。そこで、代わりに国民健康保険、国民年金に加入することになるのです。

社会保険にはどのような役割があるのか?

創業先生
では、それぞれの役割について説明していきましょう。

健康保険

健康保険は、医療給付や各種手当を支給して、生活を安定させることを目的とした社会保険です。

この健康保険に加入しているおかげで、病気やケガをしたとき、その医療費の一部を補助してもらうことができます。

その他、病気や出産で会社を休むことになったとき、給与の一部が補填されて支給されたりします。出産の場合は、さらに別途の手当てをもらうことができます。

厚生年金

厚生年金は公的年金のひとつです。これに加入して保険料を納めていると、将来的に一定額の年金を支給してもらえます。

その他、一定のケガや病気になった場合には障害年金がもらえますし、本人が亡くなった時には遺族年金が支給されます。

介護保険

介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支えるために設けられた社会保険制度です。

65歳以上の人は、原因を問わず要支援・要介護状態となったときに介護保険サービスを受けることができます。一方、40~64歳の人は、老化による病気が原因で要支援・要介護状態になったときに、介護保険サービスが受けられます。

また、介護保険が特徴的なのは、会社員のすべてに支払い義務があるわけではなく、40歳以上になると支払い義務が生じる点です。

雇用保険

雇用保険は失業した場合に、失業給付金が受け取れたり、そのほか雇用状態の改善や失業の予防を図る目的で設けられている社会保険制度です。

さて、上記の介護保険は、年齢によって支払い義務が生じましたが、この雇用保険は働く時間によって適用要件が決まっています。

詳しい適用要件は・・・

雇用保険の適用要件

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 雇用見込みが継続して31日以上
  • 同一事業主の適用事業所に65歳以降も継続雇用されていれば、年齢を問わず被保険者になる
  • 株式会社の代表取締役や取締役などの役員は被保険者とはならない
  • となっております。

    社会保険の加入義務は?

    強制適用事業所

    国、地方公共団体、株式会社などの法人は、業種を問わず従業員が1人でもいれば、社会保険に必ず加入しなければなりません。このような事業所を強制適用事業所といいます。

    なおこの法人には、私設法人のほか、公益法人、営利法人、社団法人、財団法人も含まれます。つまり、どのような法人形態であれ事業内容であれ、制限なく強制的に加入義務があります。

    任意適用事業所

    さて、個人事業主の場合は、常時雇用する従業員が5人未満の事業所であれば、社会保険に加入する必要はありません。ただし、一定の要件を満たせば、加入することもできます。これを任意適用事業所といいます。

    任意適用事業所とは・・・

  • 強制適用事業所でない事業所
  • 厚生労働大臣の認可を受ける
  • これらの要件を満たすと、個人事業主でも社会保険に任意加入することができます。

    なお、社会保険に加入するためには、加入者となる従業員の2分の1以上の同意を得たうえで申請する必要があります。

    保険料の負担額は?

    保険料の負担については、

    • 健康保険料
    • 介護保険料
    • 厚生年金保険料
    • 雇用保険料

    上記の保険料ごとにチェックしたうえで、大まかに掴むことが大事です。

    なぜなら、社会保険料の料率は毎年改定があり、その都度金額が変わっております。また、加入している社会保険組合や、地域によっても料率は異なります。

    しかしながら、極端に金額が変わることはありませんので、大まかに料率をチェックした後、「大体これくらいはかかるんだ」と、大まかに把握してイメージしておけば大丈夫です。

    ご参考までに、全国健康保険協会(協会けんぽ)の令和4年3月以降分の保険料をみてみましょう(東京都の場合)。

    健康保険料9.81%
    介護保険料1.64%
    厚生年金18.300%

    なお、この料率は支払うべき社会保険料の料率ですので、この金額を労使で折半します。つまり雇用する会社側と、労働者側で半分ずつ負担するというわけです。

    また雇用保険については、業種ごとに異なり、次のようになっています。

    ※園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖及び特定の船員を雇用する事業については一般の事業の率が適用されます。

    これを見ますと、支払うべき社会保険料はおおまかにみると約30%であり、会社負担分はその半分の約15%くらいであるとイメージしておくと良いでしょう。

    したがって、社員を雇用するときは、支給する給与額に加え、約15%の社会保険料が上乗せされると考えておくと、資金繰りのイメージができると思います。